東京信用保証協会の創業融資を受ける場合に、本店所在地の区のあっせんを受けることにより利子補給をしてくれたり、保証料補助をしてくれるメリットがあります。
しかし、私が創業融資を申し込み際には区のあっせんは受けませんでした。私の事例を見ながら区の制度融資のメリット、デメリットについて説明します。
区のあっせんを受けるメリットは下記二点があげられます。
【1】利子補給、保証料補助を受けることができる。
→私が創業をした千代田区の場合は、平成28年度現在では下記表の通りの内容になっております。
千代田区民の場合、融資限度額2500万円、本人負担利率0.4%、保証料全額補助が適用されます。
私は千代田区民ではありませんので、あっせんを受けた場合は融資限度額1000万円、本人負担利率1.4%、保証料補助無しが適用されます。
創業融資の金利は2%前後ですので0.6%ほどの補助を受けられたことになります。
利子補給、保証料補助の条件は区によって異なります。
私が知っている限りで最も有利な条件を出してくれる区は品川区です。
品川区の場合、初めて創業する人は、平成28年度は本人負担利率は0.2%、保証料補助は全額とかなりの好条件で補助を受けることができます。
【2】計画書を中小企業診断士に相談ができる
→千代田区の場合は「地域振興部商工観光課商工融資係」の窓口にいる中小企業診断士に相談をしながら創業計画書を作ります。
大抵の人が初めて作る創業計画書を相談しながら作れるということはメリットになるでしょう。
融資限度額 | 本人負担利率 | 信用保証料補助 | |
---|---|---|---|
千代田区民 | 2,500万円 | 0.4%(名目利率2%のうち、1.6%利子補給) | 全額 |
一般 | 1,000万円 | 1.4%(名目利率2%のうち、0.6%利子補給) | 無し |
創業融資で区のあっせんを受ける場合のデメリットも主に二点ございます。
【1】あっせんまでに一か月前後かかる
→区であっせんを受けるまで平日の9-17時に平均4回通う必要があり、一か月前後かかるケースが多いです。ようやくあっせんを受けてから東京信用保証協会に申し込みを行いますので、そこからさらに1.5-2か月程度の時間がかかることが多く、区に相談をしてから融資を受けるまでに約3か月の期間を要します。
私の場合は、勤めながらの創業準備をしていたので平日の9-17時に4回通うことが難しい時間的制約と、創業融資の準備を始めてから2か月以内には融資を受けなくては事業を始められないという状況でした。
また、私の場合は利子補給を受けても5年間で6万円ですが、あっせんを受けるための一か月を事業に使えれば、少なくとも6万円以上の利益を出すことができます。ですので、私からするとあまり魅力的な条件とは思えませんでした。
以上から、私の場合は区のあっせんは受けずに東京信用保証協会へ申し込みました。
【2】自己資金と同額までしかあっせんしてくれない区役所もある。
→区によってあっせん条件は異なりますが、中には自己資金と同額しかあっせんをしてくれない区役所もあります。例えば、500万円の自己資金で1000万円を申し込みたい場合、これではそもそも申し込み自体ができません。
例えば、平成28年度現在、港区では初売上が立つ前の申請は自己資金の範囲内かつ1000万円以内という条件になります。
私が実際に創業融資を受けた時の融資条件は以下の通りです。
融資額:480万円
本人負担利率:1.9%
保証料:5年分で24,990円でした。年率換算で約0.1%です。
返済期間:5年間
5年間で支払利息は約23万円です。
もしあっせんを受けて利子補給をいただいた場合の支払利息は約17万円になります。
5年間で6万円の利子補給を受けられた計算です。
信用金庫などに創業融資の相談をした場合必ずと言っていいほど区のあっせんを取ることを勧められます。利子補給があるため、信用金庫の担当者も好意で言って頂いているのでしょうが、5年間で10万円前後の利子補給を受けることより、一か月早く商売を始めたほうが利益をあげることができると考えます。そのため信用金庫担当者からの提案を円滑に断る必要があります。
以下のようにお断りすることを推奨します。
▼区のあっせんを勧められた時の断り文句例
「区のあっせんの話は知っているが、あっせんを取るまでに一か月前後かかると聞いている。事業を一日でも早く始めたいのでこの時間ロスはもったいない。あっせんを受けずに直接申し込めると聞いているが、直接申し込ませてもらえないか」
この説明をすると、わかっている担当者は直接申し込みの手続きをしてくれますが、創業融資に不慣れな担当者ですと、区のあっせんを受けることがマストであると思い込んでいる方もいらっしゃいます。不慣れな担当者の場合は、持ち帰って検討するとその場はやり過ごして、他の信用金庫にも同時に相談することが得策でしょう。
→上記では、区のあっせんに対して否定的な考え方を述べましたが、ものは使いようですのでもちろん使ったほうがいいケースもあります。私が区のあっせんを使ったほうがいいと思うケースは以下の通りです。
▼事業開始の3か月以上前から準備をしている。
→区のあっせんを受けると融資まで3か月間を要しますが、そもそも準備期間が3か月以上あり、自己資金要件に問題がない場合は区のあっせんを使ったほうが金利負担が下がりますので積極的に使うべきだと考えます。
▼創業後の追加融資の際に利用する。
→事業を続けていく以上、創業融資だけでなくその後の追加融資は重要になります。
創業から1、2年後に追加融資を受ける際、時間に余裕をもって活用するのも有効だと考えます。
ただし、区の相談員に4回通いつめる時間や、計画書作成のブラッシュアップで時間投入が必要です。仮に15時間を投入する必要があると想定します。
社長自身が通いつめる必要がありますので社長自身の時間を15時間投下することになります。
例えば、15時間を営業に使ったほうが売上げがあがる等、他に有効な時間の使い方があれば区のあっせんを受けることも再考したほうがいいと考えます。
慣れない計画書作りに翻弄されストレスになるより、本業で稼いだほうが健全ではあるという考え方もあると思います。
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