役員や従業員の住居が賃貸の場合は、会社で借上げ社宅として契約する方法があります。
例えば、家賃手当の名目で給与を払った場合には通常の給与課税とされますが、法人で借上げ社宅契約をした上で、国税庁HPに掲載されている算式で計算をした賃料相当額を入居者負担にすることで節税が図れます。
ケースにもよりますが、99㎡以下の社宅の場合家賃の75%程度を会社の経費とできる場合があります。
▼メリット
借り上げ社宅を活用する場合のメリットは以下の三点がございます。
①借上げ社宅の家賃は法人税法上の損金になるため、法人税の節税に役立つ
②一定の算式で算定をした賃料相当額以上の家賃を受け取っていれば給与課税がされない=所得税、住民税の節税
③会社で負担をする部分の家賃は給与ではないので、社会保険料の計算対象にならず居住者個人、法人ともに社会保険料を削減できる
例えば、家賃20万円の物件で家賃のうち15万円を会社負担としている場合、15万円は社会保険料の計算対象になりません。概ね会社、個人ともに最大で45000円程社会保険料を節約できます。
借上げ社宅を提供することを条件に給与の額面を下げたとしても実質的に可処分取得が増加することも往々にございます。
会社、従業員双方にメリットのある方法ですので是非ご活用ください。
▼賃料相当額の計算方法
借上げ社宅の場合は以下の算式により算定した賃料相当額以上を居住者から法人が受け取っていれば
給与として課税されません。床面積には自己の住居部分だけでなく共用スペースを按分した面積も含まれます。
99㎡ギリギリの契約の場合はBに該当する場合がありますのでご注意ください。
A.役員社宅で床面積が99㎡以下の場合・従業員社宅の場合
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
※ケースによりますが、概ね家賃の15-25%程度に収まると考えられます。
B.役員社宅で床面積が100㎡以上240㎡以下の場合
家主に払う家賃の50%の金額となります。
C.役員社宅で床面積が240㎡以上の場合
豪華社宅に該当するため時価(実勢価額)が賃料相当額になります。
▼変更の流れ
私自身も独立して法人設立した際に、賃貸の自宅を法人名義に変えるように相談をしました。変更した際の流れを説明します。
・法人名義への変更
管理会社に個人契約の住居を法人名義に変更したいと相談しました。よく同様の相談はあるということで
会社名、年商見込みなど必要事項を記載して送付したら特に問題なし、
契約変更合意書に署名捺印だけすれば変更してくれるということでした。
この時、必要だと考えていた登記簿謄本も出さず、変更手数料もかかりませんでした。
変更時に手数料を取られたというケースも往々にしてあるので、管理会社やオーナーさんの考え方により手続きの流れは多少変わると思われます。
・固定資産税評価額を調べる
算式Aにあるように、賃料相当額を計算するためには固定資産税評価額が必要になります。
固定資産税評価額は固定資産税の課税明細書に記載されます。契約変更相談時に課税明細書のコピーをいただけないかと相談してみました。
管理会社の担当者には名義を法人に変える交渉はあっても、固定資産の課税明細書を要求されたケースは初めてだという旨のことを言われましたが、
自分は税理士であり、固定資産税の評価額から計算するのが社宅家賃計算上最も有利であると説明したら出してもらえした、
個人の家主様だとこの理論が理解してもらえず、だしてもらえなかった可能性もあったと思いますが、家主様が他に本業を持つ法人であったことから話が通じたものと思われます。
おそらく顧問税理士に確認をとってその通りだという話になったことでしょう。
▼賃料相当額を計算してみた
課税明細書をいただけたので早速賃料相当額を計算してみました。
※実際の数字から多少アレンジをしております。
A 建物の固定資産税評価額
固定資産税評価額4000万円
建物の床面積合計525㎡÷15部屋=1部屋35㎡
4000万円*35㎡÷525㎡*0.2%=5333円
B12円×総床面積÷3.3㎡
12円*35㎡÷3.3=127円
C 敷地の固定資産税
敷地の固定資産税9450万円
敷地面積330㎡÷15部屋=1部屋22㎡
9450万円*22㎡÷330㎡*0.22%=13860円
A+B+C=19320円
※他の部屋の広さまではわかりませんでしたので、物件の作りからすべて同じ間取りだと考え全体の面積を部屋数で割る方式で計算しました。
私が大家様にお支払いしている家賃は105,000円ですので、賃料相当額は家賃の18%強と計算されました。
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